左肩関節脱臼、右橈骨遠位端骨折ほか
69歳 女性
本日、戸外の階段を下りている際、つまづき転倒(詳細不明、頭はうっていないと)。直後より、左肩と右手関節の安静時痛あり。左肩全く動かせないと。
初検時、左肩関節弾発性固定あり、知覚障害なし。右手関節外観上変形あり、橈骨遠位端部腫脹・圧痛あり。脱臼既往無し。
「今さっき転んじゃって、午前の受付時間に間に合うよう急いできた。」と御自身で車を運転して来院されました。
左肩の外観
右肩の外観
少しわかりにくいですが、健側に比べ左肩が少し凹んでいるの(三角筋の膨隆消失)がわかります。更に左肩がバネ様に固定(弾発性固定)され動かせず、上腕骨の圧痛も無いことから、肩関節脱臼と判断。
両手関節の外観
明らかに右手が曲がっているの(フォーク背状変形)がわかります。
エコー観察を行いました。
初検時 両手関節 超音波(エコー)画像
折れた骨がズレているの(転位)がわかります。
定型的な転位ですが、これくらいの年齢の方では縦割れなどでバラバラ(粉砕)になっているものと予想されます。
はじめに肩関節脱臼の整復から行いました。
仰臥位で外転整復法を行いましたが、整復されず。挙上法にて整復完了。
ただ、整復時の感覚が少しおかしい… 違和感を覚えました。
整復後、「左肩が動くようになった!」と患者さんが喜びながら手を少し動かしたところ、再度脱臼。
再び、挙上法にて整復。
再脱臼(外旋)しないよう、お腹の上に左手を置いておくようお願いしました。
次に骨折の整復。
いつもながらの一人整復で手根骨の整復をしてから、橈骨の整復を行いました。
きれいに戻った感覚もあり、エコー観察。
整復後 右手関節 超音波(エコー)画像
背側はリスター結節がとんだ跡がみえ、1㎜ほど浮いた皮質がみえますが、橈側・掌側は動画で見ても骨折部がわからない程きれいに整復されていました。
上腕からのギプスを巻く為、妻にも手伝ってもらいながら固定し、整形外科でギブスを外せるよう切り込みを入れ、提携整形外科へ紹介。
右手はギプスで固定しており、左肩関節も固定してしまうと両手が使えなくなるため、左肩は固定せず左手をギプスの上に置いて外旋しないようにとお願いし、迎えに来ていただいた旦那さんと一緒に提携整形外科へ行っていただきました。
提携整形外科の医師から
「右橈骨遠位端骨折は転位許容範囲内、左肩関節前方脱臼もあり、両上肢の負傷で自宅生活困難および精査目的にて総合病院へ紹介しました」
とご連絡いただきました。
また、提携整形外科でも再脱臼したそうで、初回整復時の違和感や不安定性の強さから、大きめの骨性バンカート損傷が疑われました。
総合病院でのCTの結果、三角骨と第五中手骨にも骨折あり。左肩は骨性バンカート損傷があり、不安定性が強くオペになるとのことでした。
あれだけ不安定性が強ければ、オペしかないと思われます。
後日、提携整形外科の医師からレントゲンをみせていただきました。
橈骨遠位端骨折の転位は許容範囲内と仰ってくださっていましたが、自分が思っていた以上に橈骨が再転位していた為、反省しました。
ギプス固定中に再転位したと思われる為、次回同じような骨折の方がみえたら固定の手順を変え、さらに良い結果を残せるよう精進したいと思います。